【AU55】1495年~1498年 イギリス ヘンリー7世 エンジェル金貨
英国貨幣史の王道を往く、初期チューダー朝エンジェル金貨の名作!
薔薇戦争を終結させ、新王朝の基礎を築いたヘンリー7世の治世。正統なる王権の誇りと中世高額金貨の洗練された美しさが一枚の中に凝縮された、歴史的価値の極めて高い金貨です。
世界中のコレクターから高い支持を集める「英国ハンマード金貨」の中でも、
特に状態と希少性に優れた王道シリーズのご紹介になります。
■デザイン
表面:悪を討つ大天使聖ミカエルが竜を刺し倒す図
銘文:HENRIC DI GRA REX ANGLIE Z FRANC(訳:神の恩寵によるイングランドおよびフランスの王ヘンリー)
【聖ミカエルの竜退治】
悪に打ち勝つ正義、神の加護、あるいは秩序の回復を端的に表すこの図像は、激動の薔薇戦争を経て誕生したチューダー朝の政治的文脈と見事に合致しています。躍動感あふれる天使の羽や、先端が十字(cross-crosslet)になった槍で竜を突く精緻な構図は、中世芸術としての高い完成度を誇ります。
裏面:王家の盾を載せた船、マスト上の十字、左右に「H」と薔薇の意匠
銘文:PER CRVCEM TVAM SALVA NOS XPE REDEMPTOR(訳:あなたの十字架により、われらを救いたまえ、キリストなる贖い主よ)
【王権を乗せた船と十字架】
裏面に描かれた船とマストの十字、そして王家の紋章(盾)は、信仰・統治・そして将来の海上国家としての歩みを予感させる英国金貨伝統の高貴なデザインです。新王朝の正統性を視覚的に知らしめる、力強いメッセージが込められています。
■状態
AU55
■コイン詳細
【発行年】1495年~1498年
【鋳造地】イングランド王国
【PCGS鑑定枚数】6枚
【額面】1エンジェル(6シリング8ペンス)
【素材】金
【直径】約27mm
【重量】約5g
【表面】聖ミカエルの竜退治
【裏面】王家の盾を載せた船
【PCGS鑑定】AU55
■ポイント
*希少性
”PCGS鑑定枚数2枚”
本品の最大の魅力は、現存数が極めて限られているという圧倒的な希少性にあります。世界的な鑑定機関PCGSにおいて、同型で登録されているものはわずか6枚。本品はその中で「第2位」という上位ポジションを獲得しています。英国ハンマード金貨市場を見渡しても、ここまで鑑定数が絞られたヘンリー7世のエンジェル金貨に出会える機会は滅多にありません。
この極端な現存数の少なさは、1495年~1498年のごく限られた期間にのみ鋳造された稀少な区分であることに加え、エンジェル金貨が辿った特別な歴史にも起因しています。
当時、この金貨は英国王室の神秘的な治癒儀礼「ロイヤル・タッチ」に用いられていました。王から直々に授けられ、病を癒やすお守りとして実際に首から下げられていたため、単なる通貨として仕舞い込まれていたコインとは異なり、良好な状態で現代まで受け継がれるケースが極めて稀だったのです。「王権・信仰・神聖性」を象徴する特別な存在だからこそ、状態の良い作品の希少性が今日これほどまでに高まっています。
このように、極めて高い希少性と深い歴史のドラマを併せ持つ英国エンジェル金貨は、現在「中世ヨーロッパコインの芸術遺産」として世界中で絶大な支持を集めています。その中でも、優れた状態を奇跡的に維持した今回のハイグレード品は、コレクションの主役を飾るにふさわしい貴重な歴史遺産と言えます。
*状態
”PCGS第2位鑑定”
①MS61:1枚
②AU55:3枚(本品)
中世のハンマード金貨は、職人が一枚一枚、手作業でハンマーを用いて打刻して製造していました。
そのため、同じ時代・同じタイプの金貨であっても、打刻の強さやセンタリング、文字の綴りや省略の仕方などに必ず微妙な違いが生まれます。つまり、本貨はすべてが異なる表情を持つ、“一点物”としての魅力を備えた歴史作品です。
本品は、手打ち貨幣ならではのダイ差(刻印差)の魅力を色濃く残しながらも、PCGSにて「AU55」という高い評価を獲得しています。
特に、悪を討つ聖ミカエルの顔立ちや美しい羽のライン、足元の竜の造形、さらに裏面の船上の盾や「H」と薔薇の意匠が非常に分かりやすく残されており、中世金貨として優れた視覚性を備えています。
何世紀もの歳月を生き抜いてきた歴史の風合いをまといながらも、なお当時の素晴らしい光沢を宿したその佇まいは、その希少性と優れたデザイン性が見事に融合した、まさに中世ヨーロッパの息吹を今に伝える世界に一枚だけの表情を持つ芸術遺産です。
*市場性
英国ハンマード金貨、なかでも「エンジェル金貨」は、アンティークコイン市場において世界的な人気を誇る、“英国中世金貨の王道シリーズ”です。近年の海外オークションでも “immensely popular denomination(絶大な人気を誇る額面)” と紹介されるほど評価が高く、中世史や宗教美術を愛好する幅広い層から継続的な支持を集めています。
このエンジェル金貨が特別なのは、美しい意匠と「ロイヤル・タッチ(王の治癒儀礼)」に結び付いた深い物語性にあります。ヘンリー7世の時代、王は病を癒す儀式において、この金貨に紐を通し患者の首へ掛ける護符として授与していました。つまり本品は、単なる通貨ではなく、「王権の証・信仰の象徴・奇跡のお守り」として特別視されていた極めて神聖性の高い金貨だったのです。
さらにこちらの金貨は、職人が一枚一枚ハンマーによる手打ちで製作した「ハンマードコイン」です。完全な手作業のため、打刻の強さや位置、文字の残り方がそれぞれ異なり、同じタイプであっても全く同じ表情を持つものは存在しません。この世界に二つとない職人技による芸術性こそが、現代の量産コインにはない圧倒的な存在感を生み出しています。
このように「初期チューダー朝の歴史性」「聖ミカエルの芸術性」「ロイヤル・タッチの神秘性」を併せ持つ英国エンジェル金貨は、現在“中世ヨーロッパの芸術遺産”として世界中で絶大な支持を集めています。その中でも、優れた状態を奇跡的に維持した今回の上位鑑定品は、コレクションの主役を飾るにふさわしい貴重な歴史遺産と言えます。
▼コインのストーリー
■概要
英国貨幣史の王道を往く、初期チューダー朝エンジェル金貨の名作!
薔薇戦争を終結させ、新王朝の基礎を築いたヘンリー7世の治世。正統なる王権の誇りと中世高額金貨の洗練された美しさが一枚の中に凝縮された、歴史的価値の極めて高い金貨です。
■ヘンリー7世について
ヘンリー7世は、長く続いた内乱「薔薇戦争」に終止符を打ち、1485年にテューダー朝を開いた初代イングランド国王です。彼はボズワースの戦いでリチャード3世を破って王位に就くと、敵対勢力であったヨーク家の王女エリザベスと結婚しました。この婚姻によってランカスター家とヨーク家の合一を成し遂げ、国家の分裂を巧みに収束へと導きました。新たな王朝の紋章である「テューダー・ローズ」は、両家の和解と平和の象徴として知られています。
彼の統治の最大の特徴は、徹底した中央集権化と財政の健全化にあります。長年の内戦で疲弊した王室財政を立て直すため、貴族たちの私兵保有を厳しく禁じて王権を強化しました。さらに、効率的な税収システムの構築や外国との有利な通商条約の締結に尽力し、驚異的な財政再建を成し遂げました。その冷徹とも言える抜け目のない財政管理から、後世には「冷酷な倹約家」と評されることもありますが、彼が築いた揺るぎない経済基盤こそが、息子のヘンリー8世や孫のエリザベス1世の時代にテューダー朝が黄金期を迎える土台となったのです。
派手な軍事的功績よりも、地道な法秩序の確立と外交交渉による平和を重んじたヘンリー7世は、中世的な騎士道の世界から近世的な絶対王政へとイングランドを脱皮させた、極めて有能で現実主義的な名君であったと言えます。
■ロイヤル・タッチ(王の治癒儀礼)とは
ロイヤル・タッチとは、中世から近世のヨーロッパ、特にイギリスとフランスの王室において行われていた、病気をも治すとされた神秘的な王の治癒儀礼です。当時は「王権神授説」に基づき、神から統治権を授かった国王の身体には聖なる力が宿っていると広く信じられていました。その王が病人に直接触れることで、「王の病」と呼ばれた瘰癧(るいれき)などの結核性疾患が奇跡的に治癒するとされ、多くの人々が王の救いを求めて宮廷へと集まりました。
この儀礼は、医療が未発達だった時代における民衆の救済策であったと同時に、王権の正統性と神聖さを強く誇示するための高度な政治的演出でもありました。特にイギリスでは、大天使ミカエルが描かれたエンジェル金貨などの特別なメダルが国王の手から病人に直接授けられ、人々はそれを王の聖なる力を宿した強力な「お守り」として生涯大切に身に付けました。これにより、民衆は信仰心にも似た絶対的な忠誠心を国王に対して抱くようになり、王室の権威は大いに高まりました。
時代が進み、科学や医学が発展するとともにこの超自然的な儀礼は次第に衰退し、18世紀頃にはその歴史を閉じることになります。しかし、国王が自ら民衆に触れて慈悲を施すロイヤル・タッチは、当時の人々にとって単なる迷信を超えた精神的な支えであり、王と臣民を精神的・政治的に深く結びつける、極めて重要な宮廷儀礼であったと言えます。





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